メニュー

授乳期乳腺炎・乳輪下膿瘍・肉芽腫性乳腺炎

授乳期乳腺炎

授乳期の乳腺炎について、当院の診断法と治療法を説明します。

授乳期乳腺炎の診断・治療

 授乳期の乳腺炎は、出産後2週間から2ヶ月と、断乳前後に起こりやすい傾向にあります。乳腺炎は、乳汁が多く作られすぎた場合や、乳管の中の細菌の種類の変化・増加で、乳管が相対的に細くなり乳汁が鬱滞することから始まります。乳汁の鬱滞は、助産院での治療をお勧めしています。当院では、乳腺炎が悪化した場合に、病態を診断し、抗生物質の処方や切開排膿術などの処置を行っています。

① 乳汁を運ぶ乳管が細菌の塊などで細くなり、乳汁が渋滞を起こすことが原因です。乳汁が乳管でうっ滞すると、乳管や乳管の周囲が浮腫み、痛みや赤みを感じます(炎症性乳腺炎)。授乳をしっかり行い、乳房マッサージによって溜まった乳汁を排出し、安静にして免疫力を高めること、鎮痛剤を内服することで、多くの患者さんは治ります。

② 乳管の中は、皮膚や赤ちゃんの口の中と同様に細菌が付着しています。乳管が炎症で腫れ、細菌の塊が乳管を閉塞すると、適度な温度と栄養のある環境で細菌が急速に繁殖します。強い痛みが出て、赤く腫れ、高熱を出すことがあります(細菌性乳腺炎)。授乳、安静に加え、炎症の部分を冷やしたり抗生物質を使用することで、多くの患者さんは治ります。

③ 感染性乳腺炎が悪化すると、膿の塊を作ります(乳腺膿瘍)。痛みや高熱が出たり、乳汁の出が悪くなりす。乳汁の味が悪くなり、赤ちゃんの飲みが悪くなります。しっかり麻酔をして膿瘍を切開して排出することで、症状は急速に改善します。

感染性乳腺炎の治療

 原因となる細菌の種類は、患者さんの住んでいる地域・時代で、一定の傾向が見られます。当院では、患者さんの原因菌を定期的に調べており、最初に効果の期待できる抗生物質を処方し、同時に細菌培養検査を行います。約20%の患者さんの原因細菌は一般の抗生物質の効きにくいタイプで、症状と検査の結果を見ながら、より効果の期待できる抗生物質に変更することがあります。下の図表は当院での原因菌の検査結果です。

出典:佐貫潤一:乳腺外科医が行なう乳腺炎の診断と治療. 助産雑誌72:847-854.2018 

乳腺膿瘍の治療(切開)

 感染性乳腺炎が悪化すると、乳房に膿が溜まった状態になります。診断は超音波検査で行います。症状が軽い場合は抗生物質で経過をみることもありますが、強い痛みや高熱がある場合、膿を迅速かつ効果的に排出させることが大切です。膿瘍が小さければ、しっかり皮膚麻酔を行い、注射器で膿を抜き取ります。膿瘍が大きかったり、症状が強い場合は、赤ちゃんが授乳しやすいように乳輪から離れた場所に7mmから10mmの小切開を行います。患者さんの痛みを軽減するため、エコーで膿瘍を確認しながら吸引機を使用して膿を排出します。膿を排出した後は、シリコン製のドレーンを留置して処置は終了です。

切開で効果的な膿の排出ができた場合、抗生物質は使用しません。通常、1週間後に再受診していただき、膿瘍の消失を超音波で確認して、ドレーンを抜いて終診となります。当院では、母乳育児専門の助産院と連携して、重症の授乳期乳腺炎の治療を行っています。

 当院の乳腺膿瘍の切開排膿術の件数

乳輪下膿瘍

 乳輪下膿瘍は、乳輪・乳頭の下の痛みとしこりを自覚することから始まります。必ずしも全員ではありませんが、陥没乳頭や喫煙者に多くみられる傾向があります。乳輪の下の乳管に、皮膚の垢と同じ成分が溜まり、そこで細菌が増殖して発症すると考えられており、診察と超音波検査で診断できます。治療は、抗生物質の内服が基本となります。痛みが強かったり膿のたまりが多い場合は、十分な局所麻酔を行なった上で、切開排膿術を行います。

 症状が抗生物質や切開排膿術で改善しても、免疫力の低下などで膿瘍を繰り返し起こすことがあります。その場合は、根治手術を行うことがあります。炎症が収まったタイミングで、膿瘍をひき起こす乳管を切除し、陥没乳頭がある場合は、陥没乳頭の修復を同時に行います。喫煙者には、禁煙の指導を行います。

肉芽腫性乳腺炎

 肉芽腫性乳腺炎は、1972年に提唱された良性の炎症性疾患で、片側に多く、乳房が腫れて、痛みや赤みを伴います。しこり(膿瘍)の大きさの割に、痛みや発熱の症状が軽いのが特徴です。出産後、数年以内の女性に多く、授乳期や妊娠期に発症することもあります。通常の乳腺炎より治癒に時間がかかり、数ヶ月を要することもあります。切開をしても細菌が検出されないことが多く、稀に重症化すると、他の自己免疫疾患と合併することがあります。(結節性紅斑、橋本病、関節炎)

 治療は、対症療法として、膿瘍の切開排膿術を行ったり、症状が強い場合、ステロイド治療を行います(抗生剤治療を併用することもあり)。症状の重い場合は、症状が改善しては、少し悪化し、また改善しては少し悪化してを繰り返し、数ヶ月で治癒する経過をとります。以前は、診断に難渋して、患者さんが心配で心を痛めることもありましたが、最近は病気の概念が広がり、じっくり治療して完治を待つようになっています。

重症の肉芽腫性乳腺炎の治療経過

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME